COLUMN / 解説

回収率と的中率
──どちらを見るべきか

2026年5月28日 / 約2,500字

「あの予想家は的中率○%だ」「累計収支がプラスだ」——競馬予想の世界で頻繁に飛び交うこの2つの数字は、似ているようで本質的に違うものを測っている。どちらか1つしか見られないなら、迷わず後者(回収率/累計収支)を見るべきだ。

なぜか。極端な例で考えてみる。1.1倍の単勝を100連続で当てた予想家A。10万円分買って当たり続け、的中率は100%。だが10万円が11万円にしか増えていない。一方、10倍の単勝を10回中3回当てた予想家B。10万円分買って3万円分が30万円に化け、回収率は300%。「よく当てる」のはAだが、儲かるのはBだ。

2つの指標の定義

まず計算式から整理する。

的中率= 的中したレース数 ÷ 参加したレース数 × 100(%)
回収率= 払戻総額 ÷ 投資総額 × 100(%)

的中率は「どれだけよく当てたか」、回収率は「どれだけ増やしたか」を測る。一見どちらも大事に見えるが、馬券で生き残るためには回収率100%超を維持し続ける必要がある。100%は「投資した金額がそのまま戻ってきた」状態(収支トントン)。101%以上で初めて黒字、99%以下なら赤字。

的中率の落とし穴

的中率の数字は、買い目を絞れば絞るほど見栄えがよくなる。極端な話、1.1倍の堅い単勝を毎回買えば的中率は8〜9割を超える。でも10万円買って勝っても1万円増えるだけ。1度外せば数十回ぶんの利益が吹き飛ぶ。これを「本命党のジレンマ」と呼ぶことがある。

逆に、穴党は的中率が3割でも回収率200%という現象が起こる。10回に3回しか当たらないが、当たったときの倍率が15倍を超えていれば、トータルでは大きく勝てる。「当たらないのに儲かる」は数学的に成立する

数字で見比べる

2人の予想家を仮想的に比較してみる。どちらも仮想1万円を10レースに投資した場合の収支。

予想家 的中 払戻合計 投資合計 的中率 回収率 収支
堅実派A 8 / 10 85,000円 100,000円 80% 85% −15,000円
穴党B 3 / 10 150,000円 100,000円 30% 150% +50,000円

「的中率8割」と聞けばAが優秀に見える。だが収支ベースではBが圧勝だ。数字の見映えと実利は一致しない——この事実を知っているかどうかで、予想記事の読み方が変わる。

JRA馬券の控除率という現実

競馬で勝ち続けることが難しい最大の理由は、JRA馬券には控除率があるから。馬券の種類によって違うが、おおむね20〜30%を主催者(JRA)が天引きする。つまり買った金額の70〜80%しか払戻に回ってこない。何も考えずに馬券を買い続ければ、長期で回収率は理論上70〜80%に収束する。

これは「**毎回ランダムに買えば回収率は20〜30%マイナスから始まる**」ことを意味する。回収率100%を超えるとは、この控除率を上回るだけの予想精度がある、ということ。簡単ではない。

my-keibaが「累計収支」を看板にする理由

my-keibaは、当サイトの実力を測る指標として「累計収支」だけを公開している。これは回収率と同じ意味の数字(毎レース1万円固定投資なので、収支÷投資×100で回収率に換算できる)。

的中率の数字には、嘘がつける。
累計収支には、つけない。

「先月は的中率8割でした」と言っても、何枚買って何回当たったかが不透明だと意味がない。一方、累計収支は「投資した総額」と「戻ってきた総額」の差そのものなので、ごまかしようがない。良いときも悪いときも、そのまま表に出る。

my-keibaは毎レース仮想1万円を固定投資する。買い目をその週の調子で絞ったり広げたりはしない。これは累計収支を「比較可能な指標」として維持するための制約だ。1万円固定でなければ、損が出たときに「今回は2,000円しか張らなかったから実質ノーカウント」のような言い訳が混入する。それを許さない。

読者として見るべきもの

競馬予想記事を読むときは、次の順で数字を見るとよい。

① 累計収支(または回収率)がプラスかマイナスか。マイナスなら、その予想家から学ぶことはあっても「真似して買う」べきではない。
② サンプル数。10レースで+5万円より、100レースで+5万円の方がはるかに価値が高い。短期の偶然か、長期の実力かを見分ける。
③ 的中率。プラス収支を維持しながらの的中率が高ければ、それは「再現性のある優秀さ」を示唆する。

my-keibaはまだ始まったばかりで、累計収支は±0、参加G1は0。これから1レースずつ積み上げていく。当たれば残り、外れても残る。その通信簿だけが、AIが本当に通用するのかを語ってくれる。